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2006年01月10日

月刊「山と渓谷」掲載記事より

月刊山岳雑誌「山と渓谷」誌2005年2月号に掲載された「誌上ディベート」に「犬連れ登山」をテーマにした記事が掲載されました。(P59)
タイトルは「ディベート」となっていますが、実際には、編集部の提起したあるテーマについて、賛否双方の立場からの意見を併記したものです。
「山と渓谷」誌編集部のご厚意により、「犬連れ登山」に関する賛否両論を掲載させていただきます。

「犬連れ登山」賛成の立場から発言しているのは、当協会スタッフでもある加藤篤さん。
反対の立場から発言しているのは信州大学教育学部教授(動物生態学)の中村浩志さんです。
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賛成■加藤 篤さんの発言

「犬連れ登山を規制するのはおかしい」とは思いませんが「犬連れ登山だけを規制するのはおかしい」と思います。犬が環境に影響を与えるのは事実です。そして、犬以上に環境に影響を与えるのが人間です。しかし、人間の規制はされず、犬連れ登山者だけを規制する動きがあります。その理由として「犬が持っている雑菌が野生生物にうつるから」といわれることがありますが、そのような事実が確認されているわけではありません。むしろゴミめあてに集まるカラスや、大腸菌などを持っている人間のほうが問題です。

もちろん、自然破壊に弱い場所や、大勢の人が押しかけ、自然環境が脅かされている山に犬を連れていこうとは思いません。それは自然環境に過度の負担をかける入山は「人も犬も含めて」控えたいからです。さらに、盲導犬などを除いて多くの犬は外で小便をしますから、富栄養化を避ける意味で湿原に犬を連れていくのも控えるべきだと思います。

私は「犬連れ登山の是非」が論じられている影で、大きな問題が見過ごされてしまうことを恐れています。犬連れ禁止を呼びかけている場所は、たいてい登山者に人気がある山です。オーバーユースによって引き起こされている環境悪化を、本質的な原因を探ることなく、犬連れ登山者にその責任を押し付けているように思います。犬を禁止することで自然保護をしているように見せかけ、入山規制など、実現困難であっても取り組むべき対策を取っていないケースが増えています。

最後に、「犬連れ登山者」にも問題はあります。山という公の場で、犬を放したり、糞を放置したりする不届き者はたしかにいます。飼い主の意識を変えることで対処していかなくてはなりません。しかし、一部の心なきものの行動を取り上げて、全体を規制するのはおかしなことで、それでは「高山植物を盗掘する人がいるので入山禁止」ということになってしまいます。

 
(加藤篤:日本アウトドア犬協会スタッフ。大学院で森林生態学と野生生物を研究した経験から、ウェブで自然の持続的な利用法について発言している。本業はテレビ局の報道ディレクター)

反対■中村浩志さん

高山帯の自然環境は、非常に貧相かつ脆弱なもので、そこに生息できる動植物はごくわずかな種類にかぎられ、他の地域の生き物の侵入に対し、たいへん弱い存在です。捕食されるなど直接的な影響のほかに、食べ物や生活の場を奪われる、あるいは高山にない菌にさらされるなどの危険もあります。そのような特殊な自然環境のなかで独自の生態系を築いてきたところに、まったく別の環境の生物が入り込むことには大きな問題があります。

近年、サルやシカなどの野生動物が高山帯に進出してきているほか、犬や猫などのペットを山に連れてくる方が増えているという問題があります。しかしこれは、高山の自然が特殊であることを知らないからです。欧米文化の影響でしょうが、ふだんの街での生活をそのまま山の上まで持ち込もうとするのは、日本では大きな間違いです。

私が研究しているライチョウについて言えば、その保護を目的に4年前に発足した「ライチョウ会議」の場で、飼い主がちょっと目を離している間に、連れていた犬が、ライチョウのヒナをくわえてきたという事例さえ報告されています。

日本の高山帯の自然は、ヨーロッパのそれにくらべて非常に豊かで美しいと感じています。これは、山の上まで牧場にして開発してきたヨーロッパと、山を神聖なものとし、みだりに入ることをタブー視し、そこでの殺生を禁じてきた日本との、文化的・歴史的なちがいによるものだと考えています。日本のライチョウだけが人を恐れないという、世界的に見てまれな性質をもっているのも、そのような日本の文化と歴史があったからなのです。

日本の美しい山の自然を後世に残すためには、こうした視点が欠かせないと思います。ペットの問題にしてもそうです。欧米文化をすべてまねる必要はありません。日本独自の伝統と文化が、先進国のなかではまれともいえる美しい自然を残してくれたのですから。

(中村浩志:信州大学教育学部教授。専攻は動物生態学で、ライチョウやブッポウソウなどの鳥類研究を専門とする。ライチョウ研究と保護の横断的組織「ライチョウ会議」の会長も務める。 )

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以上、編集部の許可をいただき、月刊「山と渓谷」 2005年2月号より転載しました。
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投稿者 O-DOG_Staff : 2006年01月10日 17:16